英語の大規模汎用コーパス&学習者コーパスの日本語マニュアルまとめ
ウェブ上に無償で公開されている,英語の大規模汎用コーパス&学習者コーパスの日本語マニュアルの情報をまとめました。
- 授業用資料と備忘録のために作成しましたが,一般公開のエントリと致しました。少しでも,本エントリへ辿り着いた方のお役に立てましたら幸いです。
- 現在は2014/10/31付の情報を基にしており,不定期でアップデートするかもしれません。
- 間違いや新情報等がありましたら,本ブログのコメントや @imukat141 までお伝え頂けますと嬉しく思います。
BNC (British Natinal Corpus)
- BNCwebを使ったコーパス検索
執筆者:石井康毅先生
COCA (Corpus of Contemporary American English)
- COCAを利用した言語データの採取と統計処理の基本
執筆者:長谷部陽一郎先生 - COCA Manual Version 1
執筆者:投野由紀夫先生の講義の成果物 - COCAの使用方法について [PDF]
執筆者:小橋川祥吾氏
NICE (Nagoya Interlanguage Corpus of English)
JEFLL (Japanese EFL Learner) Corpus
- JEFLL Manual Version 1
執筆者:投野由紀夫先生の講義の成果物
この他,『研究者WEBマガジンLingua』のリレー連載「実践で学ぶ コーパス活用術」も参考になります。
また,英語に限らずCHILDES (CHild Language Data Exchange System)全般に関しては,宮田Susanne先生の『CHILDESマニュアル(オンライン・マニュアル)version 2012-Jul-3』が非常に有用だと思います。
私の文献管理 (2014, September 12)
藤田卓郎先生のブログにて,以下の記事を拝読した。
藤田卓郎. (2014, September 9). 文献管理に悩む [Blog post]. Retrieved from http://www.takuro-fujita.com/?p=1183
ブログ記事の内容は,タイトルの通り,藤田先生による文献管理の悩みを簡潔にまとめている。
文献管理は研究を始めるにあたって大前提となるので,私自身も,悩み試行錯誤を繰り返している。
そのため,特に冒頭の箇所では,先生方も同じように悩み試行錯誤を繰り返しているのだと(藤田先生には申し訳なく思いつつも)励みと共感を得た。
大学生の時に卒業研究に取り組んで以来,日に日に増えていく文献の管理について悩む日々が続いています。色々と試行錯誤しているのですが,未だに決まったシステムを構築することが出来ていません。同時に,私以外も文献管理に関して悩みを抱えているのであれば,藤田先生のように「私の文献管理」を記しておくことで,本記事を読んで下さった方との間で情報の提供/共有/交換が可能になるのではないかと考えた。*1
そこで今回は,藤田先生が挙げられている2点に焦点を当てて,「私の文献管理」を簡潔にまとめてみる。
これまでの悩みをよく考えてみると,次の2点がいつも問題点として挙げられました。1点目は保存場所の悩み。フォルダ分けをするのか時系列に並べるのか,などなど色々な選択肢があるのですがどれが一番使い勝手がいいだろうかという悩みです。2点目はファイル名。思い立って「これからはこうつけよう」と考えてもそのルール自体を忘れてしまうこともあったり,例外が発生したりするともうお手上げ。というわけで,
- 文献の保存場所
- 文献のファイル名
文献の保存場所
文献の保存先として,クラウドストレージを使用している方は多いと思う。
クラウドストレージ上に文献をアップロードしておけば,いつでもどこでも文献の確認ができ,複数のPC間での共有も瞬時かつ容易に行えるからだ。*2
かく言う私もその一人であり,Sugarsyncを文献の保存*3に使用している。
Sugarsyncという大元の共有フォルダ内の,"References"と"読書用"という2種類の(サブ)フォルダが文献の保存用に当たる。
まず,"References"フォルダは,完全な文献保存用の場所であり,管理したい文献は全て入れておく。
その際,"References"フォルダ内に更に発行年別のサブフォルダを作成しておき,発行年毎に各PDFファイルを大別している。*4
この"References"フォルダは,文献の保存,及び後述のMendeleyによる文献の管理に特化させたフォルダである。
文献の整理整頓という点では,これだけでも申し分ないように思えるのだが,文献を整理整頓する私自身に問題が残る。
宜しくないことなのは承知で,"References"フォルダ内に入れただけで読まない/読み忘れるという事態が起こり得るのだ。
そのような由々しき事態を緩和するために,"読書用"フォルダが存在する。
特に,優先的に読むべき論文は,"読書用"フォルダにも入れておく。
当たり前のことだが,こうしておくことで読み忘れを防いで,保存・読書の両方を満たす管理が可能となる。
文献のファイル名
続けて,"References"と"読書用"フォルダ内の各文献のファイル名について。
各文献,即ちPDFファイルは全て,私が普段使用するAPAスタイルに則って"著者名 (発行年)"としている。
例えば,
- Schmitt, N. (2010). Researching vocabulary: A vocabulary research manual. Hampshire, UK: Palgrave Macmillan.
- Nation, I. S. P., & Webb, S. (2011). Researching and analyzing vocabulary. Boston, MA: Heinle, Cengage Learning.
- Schmitt, N. (2010).pdf
- Nation, I. S. P., & Webb, S. (2011).pdf
勿論,
- Schmitt, Norbert. (2010).pdf
- Nation, I. S. P., & Webb, Stuart. (2011).pdf
- Schmitt, N. (2010). Researching vocabulary.pdf
- Nation, I. S. P., & Webb, S. (2011). Researching and analyzing vocabulary.pdf
つまり,自分にとって,パッと見て分かりやすい・検索したい時に検索しやすいファイル名にするのがベストだろうと。
その2観点から,私はAPAスタイルの"著者名 (発行年)"を選んだ。
文献の管理:Mendeleyを用いて
文献の管理の最終段階として,最後にMendeleyについても少々触れておきたい。
クラウドストレージと同じく,文献管理ソフトウェアも数々の選択肢が存在する中で,私はMendeleyを使用している。
尚,文献管理ソフトウェアとは,Excel等で作っていた方も多いと思う文献管理表のハイテク版であり,Wikipediaでは"引用管理ソフトウェア"として概観できる。
Mendeleyの紹介や使い方については,"Mendeley 使い方"とググるだけでも沢山の記事がヒットする。
この「ググれば何とかなりそうだ」という安心感が,私がMendeleyを選んだ大きな理由である。*5
- 大まかな書誌情報の自動取得*6
- 指定したファイル名への自動リネーム*7
- 指定した属性毎での文献の分類*8
- 指定したスタイルでの参考文献表/Referenesの自動作成
- 指定したスタイルでのin-text citationの自動作成
- 重複して登録してしまっているファイルの発見・削除
- Mendeleyのクラウドストレージの利用
更に詳しい使い方やカスタマイズについて知りたい/調べたい場合には,筑波技術大学視覚障害系図書館による"Mendeleyの使い方"という100ページ近くに及ぶマニュアルも無料で利用可能だ。*9
そして,複数台のPC間での書誌情報の共有もクラウドストレージと組み合わせることで可能となり,SugarsyncやDropboxで同期が上手くいくのを確認済である。*10
Mendeleyの紹介や使い方同様,共有方法もググれば簡単に見付かり,例えばSugarsyncを利用した方法としては"【改良版】 Mendeleyで管理している文献を複数のPCで共有する方法"で一発である。
また,「指定したスタイル」のスタイルに関しては,MendeleyのツールバーのView > Citation Style > More Styles(またはjournal Abbreviations)を選択することで,デフォルトで登録されている数々のスタイルに加えて,更に無料で1,000位上のスタイルの候補から設定可能である。
スタイルに限らず,このような拡張性も,Mendeleyの特徴と言って良いかもしれない。
ちなみに,Mendeley以外の文献管理ソフトウェアについてもググると紹介,使い方,比較等が見付かる。
一例として,"文献管理ソフト"や"ブラウザで文献管理してAndroidタブレットで論文読む。"を挙げておく。*11
藤田先生が仰ったポイント2点を中心に,「私の文献管理」を簡潔に説明すると,以上のようになる。
尚,Mendeleyの使い方や注意点等を細かく説明しようとすると,本記事が非常に長くなってしまうと思われるので,需要と機会があればいつの日か。
最後に,文献管理について(も)大いに参考になった本を1冊紹介しておく。
堀正岳 (2012). 『理系のためのクラウド知的生産術:メール処理から論文執筆まで』 東京:講談社.
主に研究者*12を対象とした,文献管理の例やMendeleyの使い方,更にGmail,Google Drive,Dropbox,Evernote等の使い方等の基本が平易にまとめられている一冊だ。
とても読みやすいので頭から読むも良し,気になるhow toを調べるリファレンスとして使っても良いだろう。
講談社ブルーバックス(=文庫サイズ)なので,持ち運びが容易で,本を開くまでの抵抗感を抱かないのも嬉しい。
それでは,本日はこの辺りで。どうもお疲れ様でした。
拙ブログ記事の内容が,藤田先生へのアンサーの一つになれたら,そして本記事を読んで下さった方の文献管理のお役に少しでも立てたら嬉しく思う。
*1:また,上記の励みや共感のお礼として,藤田先生へのアンサーの1つにもなれれば幸いである。
*2:インターネット環境があることが前提にはなるが。
*3:正確には,研究関係のファイルの保存
*4:かつては,"References"内のサブフォルダも年代前後半やジャーナル毎など試行錯誤していたが,この形に落ち着いた。
*5:この選び方は,例えばRにも共通すると思う。
*6:書誌情報を取得できない文献や書誌情報が一部間違っている/不足している文献も往々にしてあるので,手動での細かな修正は必要にはなる。
*7:但し,私は,自動リネームの設定はOFFにしている。と言うのも,この機能は論文を勝手にアーカイブしてしまったりコピーしてしまったりといった,お節介をしでかすことがあるためだ。特に慣れない内は,お節介に気付けず,気付いた時には膨大なファイルを勝手に処理されてしまう事態が十分に有り得る。すると,Mendeleyの使用自体に挫けそうになりかねないので,個人的にはOFFを推奨する。
*8:例えば,文献の研究テーマ毎で分類したり,自分の執筆論文で参考にしている文献をまとめて分類したり等。
*9:私もとてもお世話になっており,大変感謝しております。
*10:上記のMendeley自体のクラウドストレージを使うことも勿論可能であり,一番簡単な方法かもしれない。
*11:更に余談として,URL先で挙げられている理由も原因で,私はReadCubeの使用を断念した。
*12:タイトルに「理系」を冠しているが,「理系以外」の分野の研究者,ビジネス,プライべートでも十二分に役立つと思う
"Research synthesis"に対応する日本語は?
ツイッターのタイムラインで,浦野研先生が以下の質問をされていた。
【ゆる募】Research synthesis の日本語。
下記の通り、私もアイディアを伝え、併せて少々お力添えをさせて頂いたが、力不足は明白であった。
そこで、浦野先生の用語探しが少しでも多くの人に目に触れるように、"Research synthesis"の簡単なまとめを兼ねた、ブログ記事執筆という形でもご協力できればと考えた次第である。
また、浦野先生の質問を切欠に考えたことを、この機会に記しておきたい。
■What's "Research Synthesis"?
"Research synthesis"は、亘理陽一先生のツイートをお借りして極々簡単にまとめると、以下のような研究の枠組み・手法である。
「しらべてわかったことを、ぜんぶひっくるめてきちんとまとめること」
そして、"Research synthesis"の考え方、概要、必要性の説明、主にSLA*2分野での略歴などなどに関しては、以下の論文や書籍(の該当箇所)が参考になる。*3
- Cooper, H., Hedges, L. V., & Valentine, J. C. (Eds.). (2009). The handbook of research synthesis and meta-analysis (2nd ed.). New York, NY: Russell Sage Foundation.
- In'nami, Y., & Koizumi, R. (2010). Database selection guidelines for meta-analysis in applied linguistics. TESOL Quarterly, 44, 169-184. doi:10.5054/tq.2010.215253
- Norris, J. M., & Ortega, L. (2000). Effectiveness of L2 instruction: A research synthesis and quantitative meta-analysis. Language Learning, 50, 417-528. doi:10.1111/0023-8333.00136
- Norris, J. M., & Ortega, L. (2007). The future of research synthesis in applied linguistics: Beyond art or science. TESOL Quarterly, 41, 805-815. doi:10.1002/j.1545-7249.2007.tb00105.x
- Ortega, L. (2003). Syntactic complexity measures and their relationship to L2 proficiency: A research synthesis of college-level L2 writing. Applied Linguistics, 24, 492-518. doi:10.1093/applin/24.4.492
- Porte, G. (Ed.). (2012). Replication research in applied linguistics. Cambridge University Press.
■"Research synthesis"に対応する日本語の不在?
しかし、言われてみれば、"Research synthesis"に対応する(定着した)用語や訳語は、寡聞にして思い付かない。
そこで、上記の論文の著者の1人である印南洋先生が、以下の2冊で執筆されたメタ分析の章より、参考になりそうな表現を探してみた。
- 印南洋 (2012a). 「メタ分析入門:研究結果を統合するには」 竹内理・水本篤 (編著) 『外国語教育研究ハンドブック:研究手法のより良い理解のために』 (pp. 227-239) 東京:松柏社
- 印南洋 (2012b). 「メタ分析:複数の研究を統合する」 平井明代 (編著) 『教育・心理系研究のためのデータ分析入門:理論と実践から学ぶSPSS活用法』 (pp. 224-248) 東京:東京図書株式会社
- 「先行研究を包括的に収集・統合」
- 「系統的にまとめる」
- 「先行研究の収集・統合の厳密さ」
また、その他にも
- 「客観的」・「客観性」
- 「再現性が高い」
- 「厳格性」
- 「透明性」
- 「統計的に統合」
但し、質問者の浦野先生が
@imukat141 @wtrych ありがとね〜。でもそれだと「説明」ではあるんだけど「用語」ではないのよね〜。定着させるためには短くてわかりやすいものがいいなぁと思って。
2014-08-28 17:54:13 via YoruFukurou to @imukat141
と仰っている通り、これらのフレーズやキーワードは、簡潔な用語ではなく説明にあたる。*4
理想としては、上記のフレーズやキーワードを想起できるような用語・訳語が存在すると、理解・普及の観点からも非情に有難い。
が、私個人は「研究の統合」・「先行研究の統合」を思い付くのが関の山なので、浦野先生の質問を切欠に様々な意見が見られればと願う次第である。
浦野先生は回答・意見を引き続き緩く募集中なので、アイディアを思い付いた方は、是非とも浦野先生にリプライやメールを送って頂けると私としても嬉しく思う。
■「分析統合」 vs. 「リサーチ・シンセシス」?
さて、最後に余談を少々。
この浦野先生の質問に対して、以下のような意見が見られた。
「「研究統合」という言葉を聞いたときに「まとめりゃいい」(言葉は悪いですが)というイメージにならないようにしたい」
言うまでもなく、「研究統合」は "Research synthesis" を指す。"Research synthesis" に対応する最もシンプルな訳語だろう。
実は、類似する「研究の統合」・「先行研究の統合」という訳語を思い付いた自分も、この意見には賛成、かつ似た懸念を抱いた。
と言うのも、「研究統合」または「研究の統合」といった用語は、パッと見では極めて身近な日本語のように思う。
そして、用語が身近なだけに、「単純に研究を統合するだけ」という誤った考え方に辿り着きかねない危険性もあるように感じた。
例えば、「メタ分析」や「メタ・アナリシス」というと専門用語っぽさがある(ように思う)ので、読んでいる/聞いている時に注意や意識が向きそうな気がする。
しかしながら、「研究(の)統合」というと一般的な言葉の組み合わせであるが故に、目や耳から流れていってしまわないだろうかという懸念がある。
すると、もしかすると「リサーチ・シンセシス」というカタカナ標記も、専門用語っぽさを出すという意味では良いのかもしれないとも思った。
以上は杞憂に過ぎないようにも思うのだが、せっかくの機会なので、考えたこととして併せて書いておくこととした。
以上,本日考えたことはこの辺りで。どうもお疲れ様でした。
拙ブログ記事の内容が,浦野先生の用語探し、並びにこれから"Research synthesis"について勉強・研究する方*5のお役に少しでも立てれば嬉しく思う。
最後に,ツイートを引用させて頂いた先生方に感謝致します。また,全てのツイートは本記事と無関係であり,本記事の内容に関する責任は全て私にあることを申し添えておきます。
語彙の多様性指標に関して:水本 (2014, June 25)に添えて
ツイッターのタイムラインで,水本篤先生が語彙の多様性指標(Lexical Diversity Measures)に触れられていた。
語彙の多様性は,語彙の洗練性と併せて語彙の豊かさを測定・評価するための観点・指標で,私の研究テーマの一つである。
Lexical Diversity Measures がよくまとまっていてわかりやすい。小泉利恵先生の2012年の論文。[pdf] URL
"Indices of Lexical Diversity (MTLD, HD-D (vocd), and Maas) are also included" | The Gramulator URL
MTLD ? Measure of Textual Lexical Diversity URL
そこで,僭越ながら補足の情報提供ができればと思い,思い切って久し振りにブログ執筆に着手した。
■出発点としてのKoizumi (2012)
まず,最初に言及されている小泉利恵先生の論文に関して。
Lexical Diversity Measures がよくまとまっていてわかりやすい。小泉利恵先生の2012年の論文。[pdf] URL
Koizumi, R. (2012). Relationships between text length and lexical diversity measures: Can we use short texts of less than 100 tokens? Vocabulary Learning and Instruction, 01(1), 60–69. doi:10.7820/vli.v01.1.koizumi水本先生が仰る通り,近年の語彙の多様性指標に関して,特に算出方法・ソフトウェアの使い方も含めよくまとめられている。
また,無料のオープン・ジャーナルに掲載されているため,誰でも容易に入手できるというのも非常に有難い点である。
さて,このKoizumi (2012)を出発点に,私から補足したい情報としては以下の3点である。
■Koizumi (2012)の研究の射程
Koizumi (2012)の研究の目的は,語彙の多様性指標の信頼性*1を,テキスト長の観点から検証することである。
つまり,テキストの長さの影響を受けて4種類の語彙の多様性指標の数値が不安定にならず,一貫しているか(=信頼性の高い指標であるか)否かを調査の対象としている。
そのため,語彙の多様性指標その物の概観・紹介という側面は射程外ではないかと思われる。また,分析対象の語彙の多様性指標も4種類と限られている。
そこで,
Malvern, D. D., Richards, B. J., Chipere, N., & Duran, P. (2004). Lexical diversity and language development: Quantification and assessment. Hampshire, UK: Palgrave Macmillan.
小島ますみ (2012). 「英語学習者のアウトプットにおける語彙の多様性研究の現在と今後の課題」『岐阜市立女子短期大学研究紀要』62, 29–37.参考URL: CiNii 論文 - 英語学習者のアウトプットにおける語彙の多様性研究の現在と今後の課題 & 『岐阜市立女子短期大学研究紀要』第62輯(2012年) 目次
Malvern et al. (2004)は,一冊丸ごと語彙の多様性指標に関する書籍である。
勿論,導入として丸々一冊は荷が重いので,
小島 (2012)は,紀要全体を注文する,或いは上記の紀要を蔵書として有している大学図書館等を利用するなどしないと入手ができないという困難はあるが,2012年時点までの語彙の多様性指標を概観する上では非常に有用だと考えられる。
また,Malvern et al. (2004)と異なり日本語で執筆されているため,まだ英語の専門書は敷居が高い読者や入門の入門を欲している方にもお勧めできる。
■Koizumi (2012)の発展版の存在
Koizumi (2012)の研究を更にextend*2したものが,System掲載の以下の共著論文だと思われる。
Koizumi, R., & In'nami, Y. (2012). Effects of text length on lexical diversity measures: Using short texts with less than 200 tokens. System, 40, 554–564. doi:10.1016/j.system.2012.10.012語彙の多様性の各指標に関する説明だけでなく,先行研究,検証方法,解釈・考察なども更に詳しく書かれているので,Koizumi (2012)の後に併せて読むことをお勧めしたい。
■語彙の多様性指標の算出
Malvern et al. (2004)で書かれている通り,語彙の多様性指標には様々なものが存在しており,様々な分野で用いられてきた。
管見の限りでは,SLAの分野だけでもおそらく70年以上の歴史を持っていると思われる。
Koizumi (2012), Koizumi & In'nami (2012), Malvern et al. (2004), 小島 (2012)でも数多くの指標に言及/分析している。
そうした数多くの語彙の多様性指標の算出には,RのkoRpus package (michalke, 2014)が対応している。
また,語彙の多様性指標の算出についても,上記の論文・書籍でカバーしているもの以外,例えば杉浦正利先生が言及されているMATTRも算出することが可能である。
但し,語彙の多様性指標に限らないことだが,指標算出前のdata processingには細心の注意を払う必要がある。
「語」の定義や,アラビア数字・固有名詞・略語・複合語等の取り扱いなどなど,語の多様性指標算出の前に考慮すべき・一貫させるべきことは少なくない。
何故なら,語の多様性指標はテキスト内の語数のみで算出される指標なので,分析者の語の定義・カウントに如実に影響を受けるためである。
このようなdata processingを考慮することなく,専用のソフトウェアやRを用いて指標の算出だけを行っても誤った解釈に繋がってしまう可能性が高いため,要注意である。
以上3点,水本先生のツイートとKoizumi (2012)に関連した,語彙の多様性指標に関する補足である。
拙ブログ記事の内容が,水本先生のツイートや小泉先生の論文と併せて,これから語彙の多様性指標について勉強・研究する方のお役に少しでも立てれば嬉しく思う。
それでは,本日はこの辺りで。どうもお疲れ様でした。
p.s.
この2, 3ヶ月,
- 拙論(投稿論文)が発行されたり,
- APA形式に準拠しているかどうか投稿論文の校閲(?)をさせて頂いたり,
- 中部地区英語教育学会の英語教育研究法セミナー・特別公開ゼミナールで提案・発表者として登壇させて頂いたり,
Learner Corpus Studies in Asia and the World (LCSAW) 2014 暫定プログラム公開
昨日、5/31-6/1(土・日)に神戸大学で開催されるLearner Corpus Studies in Asia and the World (LCSAW) 2014の3/20付暫定*1の自由研究発表プログラム*2が公開されました。
私も、以下のタイトルで研究発表を予定しています。
Takumi Ishii (U of Tsukuba *)*3
Assessing Lexical Diversity Measures in Short Second Language Production: Using Japanese EFL Essay Writing in the ICNALE
また、備忘録を兼ねて、個人的に気になっている発表・特に気になっている発表(太字)をメモしておきます。
Daisuke Abe (Nagoya U *)
A Comparison of Phrase Structures in Learner and Native English WritingReyhan AĞÇAM (Kahramanmaraş Sütçü Imam U)
Author Stance in Doctoral Dissertations of Native and Non-Native Speakers of English: A Corpus-Based Study on Epistemic NounsM. Pınar Babanoğlu (Sütçü İmam U, Dept. of Foreign Languages)
A learner corpus investigation on the use of adverb types in academic vocabularyMichael Barlow (U of Auckland)
Ordering of elements in learner corporaHoward Chen (National Taiwan Normal U)
Uncovering Collocation Errors by Using Automatic Collocation Extraction and ComparisonXin (Rebecca) Chen (Nothwestern Polytechnical U *)
Study on Collocational Framework of Chinese English Learners from the Perspective of PhraseologyElif Demirel (Karadeniz Technical U)
Lexical and Grammatical Variation in Scholarly Writing: a Multidimensional Comparison of Published Native and Non-native Research ArticlesYuan-peng Fan (National Taiwan Normal U *)
A Corpus-Driven Study of the Use of Linking Adverbials Between Native Speakers and EFL Learners - What is Missing?Miharu Fuyuno (Kyushu U)
Multimodal analyses of English public speaking by Asian learners: towards effective teaching of English presentation skillsZhao-Ming Gao (National Taiwan U)
Automatically Identifying the Syntactic Criterial Features in the LTTC Learner English CorpusAeisha Joharry (U of Sydney *)
A Corpus-based Comparative Study on Malaysian Learners' WritingKoichi Kawamura & Takashi Ogata (Kobe U *)
Asian learners' use of basic English prepositions and -ly adverbsYuichiro Kobayashi (Japan Society for the Promotion of Science)
A Machine Learning Approach to the Effects of Writing Task PromptsMariko Kondo et al. (Waseda U )
Building and analysis of Asian English Speech Corpus: Japanese speakers’ phonemic recognition of English consonantsNozomi Miki (Komazawa U)
Key colligation analysis of Asian Learner English: Discovering significant lexico-grammatical units, their development and their stylistic differencesWangjie Wang (U of Tokyo *)
Building a Paraphrase Dataset: Paraphrase Extraction with Document Structure ModelWararat Whanchit (Walailak U)
Persuasive Features in Reviews by Thai EFL Learners
尚、基調講演は、Lancaster UniversityのDr. Tony McEnery & Dr. Andrew Hardieと昭和女子大学の金子朝子教授による以下の5講演です。
Dr. Tony McEnery
Keynote Speech 1. Applying corpus methods in the social sciences
Keynote Speech 2. International availability of corpus resources: a comparison of the UK and Asia, with special focus on ChinaDr. Andrew Hardie
Keynote Speech 3. XML encoding for spoken learner (and other) corpora: a modest approach
Keynote Speech 4. Rethinking basic statistical techniques in corpus analysisDr. Tomoko Kaneko
Keynote Speech 5. Comparison of ICLE-J and LINDSEI-J