korukoru

考えたこと,学んだこと,研究メモ etc. を不定期に綴ります。

文献の選び方・辿り方・読み方に関して考えたこと

引き続き,亘理陽一先生のブログ記事を拝読して,考えたことを。
本日更新の内容を先に書くつもりが,自分の問題意識とあまりに関連しすぎていて上手くまとめられず,本日に至る。
そして,やっぱり上手くまとめられなかったが,今の自分が考えたこと・悩んでいることの正直な記録として残しておきたい。
尚,私の立場は,(a) 卒業研究・修士研究のサポート・(b) 自分自身も大学院生の2種類である。

亘理陽一. (2014, January 31). 文献の選び方・辿り方考。 [Blog post].
亘理陽一. (2014, January 31). 文献の読み方:Brown & Hudson (1998)を例に。 [Blog post].

■ "文献の選び方・辿り方考。"
■ "文献の読み方:Brown & Hudson (1998)を例に。"

問題提起は,亘理先生のゼミにおける,大学生3年生の卒業研究活動の紹介から。

3年生は卒論に向けての本格的な報告はこれが初めてとなるので,
大修館「英語教育」の好きな記事

関連する文献(概論書やハンドブックのチャプター)

論文(中部地区英語教育学会紀要やJALT Journal等,CiNiiなどで検索)
という流れで各回報告を行い,そこからさらに文献に当たったりして,2月のゼミ旅行までに卒論の研究課題概要(A4一枚程度のアブストラクト)を出すのをゴールとしている。2回目と3回目のいずれかまたは両方で(テーマ的に難しくない限り)英語の文献にチャレンジすることも課している。

この卒業研究の取り掛かり=文献調査*1の方法,個人的には非常に見事で来年度以降は取り入れたいと思うほどなのだが,亘理先生は以下2種類の課題を挙げられている。
  1. 参考文献が全然所蔵されていない
  2. 「論文」という縛りで検索してもらうだけでは玉石混淆を免れない
どちらも「あるある」と頷けるもので,自分自身,悩まされる機会は少なくない。

1. 参考文献が全然所蔵されていない

1点目の課題に対する有力な解決方法の1つは,亘理先生も仰っている図書館間相互貸借(ILL)*2だろう。
一言で言えば,読んで字の如く,他大学の図書館から蔵書を借りたり複写を依頼できたりする制度である。

この制度は,自分の所属大学に資料がなくても資料を入手できる,画期的な制度であるのは間違いない。
但し,その問題点も明確で,亘理先生が挙げられている通り。

となると「図書館で相互複写とか相互貸借を利用するのが筋でしょJK」ということになるのだが,学生・教員が利用しやすい仕組みとはお世辞にも言えないし,時間も費用もかかって地味につらい。
詰まるところ,使い勝手が良い訳ではなく,更に費用と時間が結構痛い*3
卒業研究で初めて研究に取り組み,しかも研究を始めたばかりの学生にとって,1,000円以上のお金を支払うのは中々の博打のように思える*4
また,「読んでみたい」と思っても,到着までに1週間ほど掛かるとモチベーションが多かれ少なかれ低下していることは否めないようにも思う*5

という訳で,画期的ではあるけれど,難も目立つ本制度。
突破口を見つけるとしたら,やはり費用の部分なのかなと。
一例として,早稲田大学名古屋大学ではILLの(一部)無料化,その他の大学でも提携大学との取り寄せであれば無料化等を行っている模様。
しかし,結局は蔵書の数や幅と同じように,所属大学によってしまうことは否めない……。

2. 「論文」という縛りで検索してもらうだけでは玉石混淆を免れない

2点目の課題は,広義の「論文を読む」ために必要なスキルで,上記2つ目の記事の締めにも繋がることだと思っている。

この問題状況の整理,つまり「課題設定」を理解しているか否かでこの論文の理解は大きく変わってくる。と,院生・学生を見ていて思った(からこそ,個人で読むのに任せるのではなく授業・ゼミで取り上げた意義があった)のだが,どうやったらそこに気づけるようになるのかということをつらつら考えた。答えはまだない。単純に論文をたくさん読むというのが一つだが…
つまり,「論文を読む」ためには,
  • 自分の目的,或いは研究課題に適した論文を選ぶスキル
  • 自分の実力に応じた論文を選ぶスキル
  • 自分が選んだ論文を適切に読めるスキル
の最低でも3種類のスキルが必要で,鍛えなければならないように思う。

そして,厄介なことに,これらのスキルは相互に関係し合っている
例えば,自分の実力を超えた難易度の高い論文を選んでしまうと,適切に読むことは極めて難しいだろう。
また例えば,自分の目的から外れた論文を選んでしまっても,やはり適切に読むのは難しいはずである。

どれか1種類のスキルを鍛えるだけでは不十分で,3種類全てを鍛えていく必要がある。
でも,卒業研究で研究を終える学部生にとって,どこまで鍛えるのが適切なのだろうか?
また,卒業研究という非常に限られた時間の中で,効率的に鍛える方法とは一体何だろう?

身も蓋も無いことを言ってしまうと,やはり確実な方法は「単純に論文をたくさん読む」ことだと,亘理先生同様に私も思う。
ただ,「たくさん」は人による上,時間も限られ,研究は卒業研究のみの場合,必要最低限に「たくさん」読む時間やモチベーションを確保することは難しいようにも感じる。
この点も時間やモチベーションを確保できない方が悪いとするのではなく*6,最大限効率的に鍛えられる/学部生に応えられる方法があると良いのだが……。

学部生の研究課題がハッキリと定まれば,指導・サポートする側としても関連度の高低は考えやすく,ある程度は難易度も考えられそう*7だ。
ただ,上記の亘理先生が挙げられているような,これから卒業研究の研究課題を決定する段階では,「関連する文献」を考えるのも難しい。

■ 突破口の可能性=指導・サポートする側のネットワーク構築?

以上の2種類の課題に対して,指導・サポートする側ができる対策は,指導・サポートする側のネットワークを(大学を越えて)構築することなのかもしれないと,最近思った。
人数が増えるほど,所属組織の枠組みも(個人レベルで)広がるほど,知識・資料の共有がしやすくなるからだ。
知識・資料の共有が広がれば,学部生の研究課題に関する

  • 効果的・効率的なアドバイス
  • 関連度・難易度を考慮した文献の提示
  • 簡易さ・速さを重視した個人間での文献のやり取り
もやりやすくなるかもしれない。
勿論,このネットワークをどのように構築するのかが新たな課題として上がってはくるだろうが,個人として考えられる可能性の一つではあるような気がする。
無策はあまりにも切ないので,そうであって欲しい。

以上,本日考えたことはこの辺りで。どうもお疲れ様でした。
最後に,自分の問題意識について改めて考え,まとめる切欠を提供して下さった亘理先生には感謝を申し上げたく思います。まとまったものが駄文・拙文の類なのが申し訳ないのですが,ありがとうございました。

*1:正確には,研究課題の設定も含むだろうか?

*2:概要は,Wikipedia内の "図書館間相互貸借" を参照のこと。

*3:私の場合、大体1~2週間かかり,1,000円前後~1,500円前後かかる。

*4:正直,自分でも痛い。

*5:正直,自分でも(以下略

*6:卒業研究で研究を終える学部生だけでなく,大学院に進学する学部生であっても,研究を始めたばかりの時や悩んでいる時には同様に。

*7:但し,難易度の基準が自分自身なので,学部生の実力にマッチするとは必ずしも言い切れないのだが……。