korukoru

考えたこと,学んだこと,研究メモ etc. を不定期に綴ります。

私の文献管理 (2014, September 12)

藤田卓郎先生のブログにて,以下の記事を拝読した。

藤田卓郎. (2014, September 9). 文献管理に悩む [Blog post]. Retrieved from http://www.takuro-fujita.com/?p=1183

ブログ記事の内容は,タイトルの通り,藤田先生による文献管理の悩みを簡潔にまとめている。
文献管理は研究を始めるにあたって大前提となるので,私自身も,悩み試行錯誤を繰り返している。
そのため,特に冒頭の箇所では,先生方も同じように悩み試行錯誤を繰り返しているのだと(藤田先生には申し訳なく思いつつも)励みと共感を得た。

大学生の時に卒業研究に取り組んで以来,日に日に増えていく文献の管理について悩む日々が続いています。色々と試行錯誤しているのですが,未だに決まったシステムを構築することが出来ていません。
同時に,私以外も文献管理に関して悩みを抱えているのであれば,藤田先生のように「私の文献管理」を記しておくことで,本記事を読んで下さった方との間で情報の提供/共有/交換が可能になるのではないかと考えた。*1

そこで今回は,藤田先生が挙げられている2点に焦点を当てて,「私の文献管理」を簡潔にまとめてみる。

これまでの悩みをよく考えてみると,次の2点がいつも問題点として挙げられました。1点目は保存場所の悩み。フォルダ分けをするのか時系列に並べるのか,などなど色々な選択肢があるのですがどれが一番使い勝手がいいだろうかという悩みです。2点目はファイル名。思い立って「これからはこうつけよう」と考えてもそのルール自体を忘れてしまうこともあったり,例外が発生したりするともうお手上げ。
というわけで,
  • 文献の保存場所
  • 文献のファイル名
の2点にフォーカスして,藤田先生と同じく,「私の文献管理」を記していく。

文献の保存場所

文献の保存先として,クラウドストレージを使用している方は多いと思う。
クラウドストレージ上に文献をアップロードしておけば,いつでもどこでも文献の確認ができ,複数のPC間での共有も瞬時かつ容易に行えるからだ。*2
かく言う私もその一人であり,Sugarsyncを文献の保存*3に使用している。

Sugarsyncという大元の共有フォルダ内の,"References""読書用"という2種類の(サブ)フォルダが文献の保存用に当たる。
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まず,"References"フォルダは,完全な文献保存用の場所であり,管理したい文献は全て入れておく。
その際,"References"フォルダ内に更に発行年別のサブフォルダを作成しておき,発行年毎に各PDFファイルを大別している。*4
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この"References"フォルダは,文献の保存,及び後述のMendeleyによる文献の管理に特化させたフォルダである。
文献の整理整頓という点では,これだけでも申し分ないように思えるのだが,文献を整理整頓する私自身に問題が残る。
宜しくないことなのは承知で,"References"フォルダ内に入れただけで読まない/読み忘れるという事態が起こり得るのだ。

そのような由々しき事態を緩和するために,"読書用"フォルダが存在する。
特に,優先的に読むべき論文は,"読書用"フォルダにも入れておく。
当たり前のことだが,こうしておくことで読み忘れを防いで,保存・読書の両方を満たす管理が可能となる。

文献のファイル名

続けて,"References"と"読書用"フォルダ内の各文献のファイル名について。
各文献,即ちPDFファイルは全て,私が普段使用するAPAスタイルに則って"著者名 (発行年)"としている。
Publication Manual of the American Psychological Association APA論文作成マニュアル 第2版

例えば,

  • Schmitt, N. (2010). Researching vocabulary: A vocabulary research manual. Hampshire, UK: Palgrave Macmillan.
  • Nation, I. S. P., & Webb, S. (2011). Researching and analyzing vocabulary. Boston, MA: Heinle, Cengage Learning.
であれば,
  • Schmitt, N. (2010).pdf
  • Nation, I. S. P., & Webb, S. (2011).pdf
となる。

勿論,

  • Schmitt, Norbert. (2010).pdf
  • Nation, I. S. P., & Webb, Stuart. (2011).pdf
  • Schmitt, N. (2010). Researching vocabulary.pdf
  • Nation, I. S. P., & Webb, S. (2011). Researching and analyzing vocabulary.pdf
のような選択肢も有り得ると思っていて,ファイル名のポイントは,視認性と検索性の2点だと考えている。
つまり,自分にとって,パッと見て分かりやすい・検索したい時に検索しやすいファイル名にするのがベストだろうと。
その2観点から,私はAPAスタイルの"著者名 (発行年)"を選んだ。

文献の管理:Mendeleyを用いて

文献の管理の最終段階として,最後にMendeleyについても少々触れておきたい。
クラウドストレージと同じく,文献管理ソフトウェアも数々の選択肢が存在する中で,私はMendeleyを使用している。
尚,文献管理ソフトウェアとは,Excel等で作っていた方も多いと思う文献管理表のハイテク版であり,Wikipediaでは"引用管理ソフトウェア"として概観できる。

Mendeleyの紹介や使い方については,"Mendeley 使い方"とググるだけでも沢山の記事がヒットする。
この「ググれば何とかなりそうだ」という安心感が,私がMendeleyを選んだ大きな理由である。*5

  • 大まかな書誌情報の自動取得*6
  • 指定したファイル名への自動リネーム*7
  • 指定した属性毎での文献の分類*8
  • 指定したスタイルでの参考文献表/Referenesの自動作成
  • 指定したスタイルでのin-text citationの自動作成
  • 重複して登録してしまっているファイルの発見・削除
  • Mendeleyのクラウドストレージの利用
などなど,極々基本的な使い方だけでも,非常に多くのメリットが生まれる。
更に詳しい使い方やカスタマイズについて知りたい/調べたい場合には,筑波技術大学視覚障害系図書館による"Mendeleyの使い方"という100ページ近くに及ぶマニュアルも無料で利用可能だ。*9

そして,複数台のPC間での書誌情報の共有もクラウドストレージと組み合わせることで可能となり,SugarsyncやDropboxで同期が上手くいくのを確認済である。*10
Mendeleyの紹介や使い方同様,共有方法もググれば簡単に見付かり,例えばSugarsyncを利用した方法としては"【改良版】 Mendeleyで管理している文献を複数のPCで共有する方法"で一発である。

また,「指定したスタイル」のスタイルに関しては,MendeleyのツールバーのView > Citation Style > More Styles(またはjournal Abbreviations)を選択することで,デフォルトで登録されている数々のスタイルに加えて,更に無料で1,000位上のスタイルの候補から設定可能である。
スタイルに限らず,このような拡張性も,Mendeleyの特徴と言って良いかもしれない。

ちなみに,Mendeley以外の文献管理ソフトウェアについてもググると紹介,使い方,比較等が見付かる。
一例として,"文献管理ソフト""ブラウザで文献管理してAndroidタブレットで論文読む。"を挙げておく。*11



藤田先生が仰ったポイント2点を中心に,「私の文献管理」を簡潔に説明すると,以上のようになる。
尚,Mendeleyの使い方や注意点等を細かく説明しようとすると,本記事が非常に長くなってしまうと思われるので,需要と機会があればいつの日か。

最後に,文献管理について(も)大いに参考になった本を1冊紹介しておく。

理系のためのクラウド知的生産術―メール処理から論文執筆まで (ブルーバックス)
堀正岳 (2012). 『理系のためのクラウド知的生産術:メール処理から論文執筆まで』 東京:講談社.

主に研究者*12を対象とした,文献管理の例やMendeleyの使い方,更にGmailGoogle DriveDropboxEvernote等の使い方等の基本が平易にまとめられている一冊だ。
とても読みやすいので頭から読むも良し,気になるhow toを調べるリファレンスとして使っても良いだろう。
講談社ブルーバックス(=文庫サイズ)なので,持ち運びが容易で,本を開くまでの抵抗感を抱かないのも嬉しい。

それでは,本日はこの辺りで。どうもお疲れ様でした。
拙ブログ記事の内容が,藤田先生へのアンサーの一つになれたら,そして本記事を読んで下さった方の文献管理のお役に少しでも立てたら嬉しく思う。

*1:また,上記の励みや共感のお礼として,藤田先生へのアンサーの1つにもなれれば幸いである。

*2:インターネット環境があることが前提にはなるが。

*3:正確には,研究関係のファイルの保存

*4:かつては,"References"内のサブフォルダも年代前後半やジャーナル毎など試行錯誤していたが,この形に落ち着いた。

*5:この選び方は,例えばRにも共通すると思う。

*6:書誌情報を取得できない文献や書誌情報が一部間違っている/不足している文献も往々にしてあるので,手動での細かな修正は必要にはなる。

*7:但し,私は,自動リネームの設定はOFFにしている。と言うのも,この機能は論文を勝手にアーカイブしてしまったりコピーしてしまったりといった,お節介をしでかすことがあるためだ。特に慣れない内は,お節介に気付けず,気付いた時には膨大なファイルを勝手に処理されてしまう事態が十分に有り得る。すると,Mendeleyの使用自体に挫けそうになりかねないので,個人的にはOFFを推奨する。

*8:例えば,文献の研究テーマ毎で分類したり,自分の執筆論文で参考にしている文献をまとめて分類したり等。
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*9:私もとてもお世話になっており,大変感謝しております。

*10:上記のMendeley自体のクラウドストレージを使うことも勿論可能であり,一番簡単な方法かもしれない。

*11:更に余談として,URL先で挙げられている理由も原因で,私はReadCubeの使用を断念した。

*12:タイトルに「理系」を冠しているが,「理系以外」の分野の研究者,ビジネス,プライべートでも十二分に役立つと思う